原価計算と原価率の算出方法

経営

原価計算

原価計算やってみよう!

初心者でも分かる
-原価率計算-

経営

- 2015.07.06 -

原価計算とは

原価計算と聞けば、小難しいイメージがあるかもしれません。
しかし、基礎を知ってしまえば、ごく単純なもの。
忙しいビジネスマンでも、5分で原価率計算の考え方が理解できます。
本稿では、厳密な言葉の意味は据え置き、初心者向けに分かり易く説明します。

原価計算とは、単純に言えば、販売商品に掛かるコストを計算することです。
結論から言えば、以下の2つのコストを抑えるだけで、原価計算が可能です。

  • ①変動費
  • ②固定費

会社経営に携わる人であれば、一度は聞いたことのある言葉だと思います。
では、以下で内容を見ていきましょう。

変動費とは

変動費は、以下のイメージで押さえれば充分です。

  • ・変動費=商品が売れる/生産する度に、発生するコスト

名前からも分かるように、変動的に発生するコストと考えます。
具体例を挙げれば、以下の通りです。

  • A)仕入商品
  • B)製品材料
  • C)商品の配送運賃
  • D)工場の電気代
  • E)販売手数料

上記A)の仕入商品は、変動費の代表的なものです。
商品を売るためには、仕入が必要です。
反対に、売らなければ、仕入コストは発生しません。
つまり、売る量に比例して、原価が増減するというわけです。

上記C)商品の配送運賃、も同じ考え方です。
商品が売れなければ、お客様へ配送する必要もありません。

上記E)販売手数料は、どうでしょうか。
主に、得意先を紹介・売上が立つ毎に、支払うことが多いのではないでしょうか。

以上のように、変動費=販売数量に比例して、発生するコスト、とイメージできます。

固定費とは

固定費は、変動費以外のものを指します。
つまり、「販売数量に比例せず、発生するコスト」というイメージです。

具体例を挙げれば、以下の通りです。

  • A)人件費
  • B)減価償却費
  • C)修繕費
  • D)工場の電気代
  • E)消耗品費

上記A)の人件費は、固定費の代表的なものです。
商品が売れても、売れなくても、給料は毎月従業員に支払います。
つまり、固定的にコストが発生する、というわけです。

上記E)消耗品費、はどう考えればよいでしょうか。
例えば、工場で使うハンマー、事務で使うボールペン、などが該当します。

たしかに、販売数量が増えれば、使う消耗品も増える、という向きもあるかもしれません。
しかし、明確な比例関係がない限り、変動費とは扱わないことが多いと思います。

変動費と固定費、両方の性質を持つもの

お気付きかもしれませんが、上記D)工場の電気代、は両者に例示されています。
つまり、変動費と固定費、両方の性質を持つもの、という意味で使っています。

工場では、契約形態により、固定的に発生する電力費、が存在します。
例えば、「使用量に関わらず、月額100万円は固定的に発生します」
といった契約です。

1ヶ月の電気料金が500万円だとした場合、

  • ・固定費=100万円
  • ・変動費=400万円(※)
  •  ※500万円-100万円

と区分するわけです。
このような費目は、変動費と固定費に分解して管理する方法が、多いと思います。

変動費と固定費、その分類方法

では、変動費と固定費は、どのように分類すれば良いでしょうか。
実は、「こうでなければならない」と言った決まった方法はありません。

結論から述べると、「企業実態に応じた、合理的な基準」を決めて、分類します。
例えば、人件費で考えてみます。
人件費は、典型的に固定費と分類される費目です。

しかし、工員の残業代も固定費といえるでしょうか?
製造ラインの工員が残業するほど、製品が多く生産できる、と考えることもできます。
であれば、販売(生産)数量に比例して発生するコスト、ではないでしょうか。

他方、単に工員の能力不足で残業が発生する場合はどうでしょうか。
この場合は、販売(生産)数量に比例するとは、言い切れないでしょう。

よって、企業実態に鑑み、合理性があれば、残業代=変動費、と捉えることができます。

原価のイメージ図

ここまでで、原価は変動費と固定費に分類されることが理解できました。
イメージ図に示すと、以下の通りです。

原価イメージ

原価率を計算するためには、最後にもう一捻りが必要です。
それは、「在庫の計算」です。
実は、原価計算はこの「在庫の計算」が全てと言っても過言ではありません。
次項では、在庫の計算について、見ていきます。

原価計算の要=在庫計算、にあり!

在庫計算とは、期末(月末)に売れ残っている商品(貯蔵品)の計算のことです。

なぜ、在庫計算が必要なのか

結論から述べれば、在庫計算は、適正な期間損益計算のために必要な方法です。
では、具体例にて、説明しましょう。
仮に、ある会社では、以下の商品を製造販売していたとします。

製造販売構造

ある人が、こう考えたとします。
「多くの利益が出てしまうので、コストを増やしたい。」

そして、このようにも考えました。
「仕入れた商品はいずれ販売されるのだから、30円分まとめ買いしよう。」
その結果、以下の原価構造となりました。

変更後原価構造

このような処理が認められれば、利益操作が可能になってしまいます。
また、実際どれだけ儲かっているのか、不明確になります。

そこで、「在庫計算」の方法が必要となります。
在庫として計算処理されたものは、コストから除外されます。
上記例で言えば、原価構造:B→Aへ戻されることになります。

在庫計算後の原価イメージ

在庫計算は、儲けの実態を明確にするための手段です。
在庫計上後の原価イメージは以下の通りです。

在庫計上後原価

上記例では、変動費から在庫分を抜いています。
しかし、製造業では固定費からも在庫分を抜くことになります。

詳しくは別稿に委ねますが、
「まだ売れてない商品に対応する費用は、在庫計上するのだな。」
と覚えておけば、充分です。

これで、原価計算は完了しました。

原価率の計算

原価率の計算方法は、至極単純です。
具体的には、以下の通りです。

  • ・原価率 = 原価 ÷ 売上高

上記の原価構造:Cを使ってみます。
この場合、原価率は、

  • ・50円 ÷ 100円 = 50%

となります。
原価率の計算方法自体は単純で、さほど問題はありません。
問題は、計算式中の「原価」をどう捉えるか、という点にあります。

本稿で、原価は、変動費と固定費から成ると説明しました。
しかし、さらに原価は細分化することができます。
イメージ図は以下の通りです。

細分化原価

つまり、製造原価と非製造原価(販管原価)とに、分けることができます。
これを元に、再構築した原価イメージ図は以下の通りです。

再構築原価

よく商売人間で言われる、「粗利」の原価は、下記意味で使われることがあります。

粗利の原価

上記図から分かるように、一部原価(販管変動費+販管固定費)が考慮されていません。
また、下記のように捉える人もいるでしょう。

限界利益の原価

上記図では、固定費(製造固定費+販管固定費)が考慮されていません。
つまり、人によって、原価率の捉え方が異なるのです。

しかし、どの方法も間違いというわけではありません。
販売商品の売価決めのときは、上記Fの方法がよく用いられます。
商売人の間での、原価の話では、上記Eの方法がよく用いられます。
収益改善の話をするときは、上記Dの方法がよく用いられます。

したがって、原価率の話をするときは、以下の点に注意します。

  • ・その人は、何をもって、「原価」としているか
  • ・変動費/固定費の区別をできているか
  • ・その原価率は、自分が考える「原価」と一致しているか
  •  (同じ土俵/前提で比較が可能か)

統計理論を論じると同じく、前提が違えば、全く異なる結果となります。
原価率を計算するときは、その計算式ではなく、「原価」の内容につき、深く検証した方が良いでしょう。

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