美容院と居抜き物件のコストパフォーマンス

経営

美容院の居抜き物件

居抜き物件のコスパを考える

美容院の出店との相性
-開業時の選択肢-

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- 2015.09.23 -

居抜き物件の特徴

居抜き物件とは、前テナント入居者が残した設備を利用した事業用賃貸物件を指します。
業種によっては、開業時の初期設備投資が多くかかります。
前入居者が自己と類似業種の場合、この資産を再利用することで初期投資額を抑える狙いがあります。
以下では、特に美容院と居抜き物件の関係について考えてみます。

居抜き物件の調査・選定時のポイント

美容室の居抜き物件では、以下のポイントに注意します。

周囲の環境や上下階の入居者

美容室の特性上、顧客は女性がほとんどでしょう。
したがって、女性が入りにくい場所に立地している場合、留意が必要です。
例えば、以下のような店舗が隣接している場合です。

  • ・風俗店
  • ・においの強い飲食店
  • (例:焼肉店の煙等)
  • ・パチンコ、キャバクラ

また、居抜き物件では前テナントも美容院(ないし類似業種)です。
よって、前テナントが退去した理由も調査する必要があります。
本音を教えてくれるオーナー/仲介会社も少ないですが、近隣住民の評判も参考になります。

また、どこの地域でも、どんな店が入っても潰れるジンクスというものがあります。
(特に、飲食店では一度は耳にすると思います)
そのような場所は、地元民も同じ目で見てしまい、集客が困難な場合があります。
よほど強い思い入れやマーケティングに自信がない場合、避けた方が無難でしょう。

さらに、専門ビルに入居する場合も注意が必要です。
例えば、美容業者だけが入居しているビルです。
一見、専門ビルは自己に不都合な業者(例えば風俗店)が入居するリスクがほぼ無くなります。
しかし、同一ビルに類似業者がいるということは、顧客の奪い合いも発生します。
例えば、美容院が併設するネイルサロンとネイルサロン専門店は、競合します。
場合によっては、テナント間で関係が悪化し、デメリットが発生する場合もあります。

サロンコンセプト、集客との整合性

居抜き物件は残置設備を再利用できるため、初期投資が低く抑えられます。
しかし、より大切なのは集客です。
美容院の集客には以下の要素が考えられます。

  • ・広告看板
  • ・内装の工夫による雰囲気作り、コンセプト訴求、差別化
  • ・設備導入による高付加価値サービスの提供

広告看板は設置禁止の物件もあります。
例えば、デザイナーズマンションでオーナーが雰囲気を重視している物件です。

また、どんな顧客層をターゲットとするかで店の内装は変わります。
例えば、高齢層に特化する場合、若年層に特化する場合、年齢を問わず広く集客する場合、です。
コンセプトによっては、結局内装一式を取り替えることになります。

他方、高価な設備が残されている場合は、入居検討に値します。
自己破産等で廃業した場合、転売困難で高価な設備が残されているケースもあります。
ただし、前入居者の所有権、抵当権等の権利関係は慎重に調べる必要があるでしょう。

拡張性の有無

将来的に、増床を考える美容院も多いと思います。
しかし美容室は地域ビジネスのため、引越により顧客離れが発生する可能性もあります。
その場合、以下のような対策も考えられます。

  • ・開業時は広めのテナントに入居しバックヤードを広く持つ
  • (あるいは一部居住用として活用)
  • ・その後ビジネスが軌道に乗ればバックヤードを接客スペースに改良する。
  • ・無くなったバックヤード機能は近隣の事務所等を借りて代用する。

低リスクを取るならば、開業時から大規模店舗・設備設置をする必要はありません。
ただし、店舗ビジネスでは拡張性も予め考慮しておいた方が良いかもしれません。

居抜き物件の改装と節税効果

節税という観点で見た場合、美容室の居抜き物件はさほど効果がありません。
なぜなら、そのまま再利用できる設備が限られるからです。
税金の基本的考え方は以下の通りです。

  • ・設備を修理してそのままの状態で使う=一括経費で落とすことが可能
  • ・設備を改良して使う=一括経費で落とせない(複数年で減価償却し費用化)

飲食店の場合、顧客の目に触れない高価な厨房スペース等はそのまま再利用が可能です。
つまり、修理により一括経費化が可能です。

一方美容室の場合、内装や調度品は全て取替えられ、再利用されることが少ないと思われます。
このとき、修理改装費は一括経費で落とせないため、飲食店の場合と比べ節税効果は劣ります。

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