キャッシュフロー会計を導入しよう

経営

キャッシュフロー

キャッシュフローが命綱

-黒字倒産を防ぐための会計処理-

経営

- 2018.06.01 -

キャッシュフローとは何か

キャッシュフローとは読んで字の如く「お金の流れ」です。
「キャッシュフロー計算書」なる会計書類を聞いたこともあるかも知れませんが、要は「どうやって会社にお金が出て行き、増えているか」を示す表のことです。
零細企業ではこの表が作られることはまず無く、作られていても読み方が分かりません。
では、現実的にどうやってお金の流れを把握することが出来るでしょうか。

貸借対照表と損益計算書(試算表)を活用する

税理士が会計記帳に関与していれば、毎月「試算表」なる資料が作られてきます。
簡単に言えば試算表とは「今どれだけ会社に財産があり儲かっているか」を、決算前の期中に示す表です。
試算表に一定の決算処理を加えたものが、貸借対照表や損益計算書となるわけです。
この表で見るべきポイントは、極端に言えば以下で紹介する要素しかありません。

現金・預金

現金・預金勘定は、その名の通りキャッシュそのものを指す項目です。
零細企業で小口現金を採用していない場合は、実務上、現金という勘定科目は使われないことが多いです。(現金の代わりに「事業主借/貸」や「短期借入金/貸付金」といった項目になります)
極論を申しますと、この現金・預金勘定さえ押さえておけば、黒字倒産・資金ショートとなることはありません。
(当然と言えば当然ですが、真実は往々にしてシンプルなものです)

まずは、この毎月残高が月商の1倍~1.5倍にキープされることを心掛けましょう。

売上

売上も読んで字の如く、会社の売上高そのものになります。
ただし、ここで注意したいのが「いつの時点で売上を立てるか」の問題です。
貴方なら、以下のうち、いつの時点で「売上が立った」と思うでしょうか。

  • ①得意先と口約束で「買うよ」と言われたとき
  • ②売買契約を交わしたとき
  • ③販売商品やサービスを納品したとき
  • ④請求書を発行したとき
  • ⑤手形・小切手を受取ったとき
  • ⑥実際に現金を手に入れたとき
  • ⑦現金を手に入れた後、半年経ってもクレーム返金が無いとき

答えは「いずれも間違いではありません」です。
つまり、どう会計処理するかは会社の判断に委ねられているのです。
(決算時には税務申告のため、然るべき処理を行ないますが)

強いて言うなら、零細企業で採る方法は、ズバリ⑥です。

なぜなら、キャッシュフローが大切になるため、実際に現金化されたタイミングを以って売上と認識した方が、会社財務の「読み」に間違いが少なくなるからです。

仕入

仕入も売上と同じ考え方で「実際に現金を支払ったとき」に立てていきましょう。
より保守的に考えるなら、上記②で仕入を認識しても良いのですが、売上と基準がバラバラになるので、かえって会社財務の「読み」にマイナスとなってしまうからです。

固定資産

固定資産は「お金は即出ていくけど、すぐに経費にできないもの」と考えておけば大丈夫です。
例えば、土地・建物、工具器具備品、車両運搬具、等があります。
節税対策が気になる方は「この経費は落とせる?」といったご質問をよくされますが、固定資産は節税効果が薄いばかりか、キャッシュフローまで悪化させてしまう代物です。
言い換えれば「多くのお金が一気に出て行く割りには、効果(=売上の発現や節税への貢献度)が低いもの」です。
つまりは「固定資産を多く持ち過ぎないこと」が零細企業の資金繰りにとって大切なことになります。

税理士と打ち合わせをしよう

零細企業の場合「どういう方針で帳簿付けで行なっていくか」を事前に税理士と相談しましょう。
「今月売上が立ったはずなのに、帳簿上は売上が増えていない・・」
「預金残高は大丈夫と思っていたが、予想外の出費で資金不足になりそうだ・・」
といった認識の乖離が発生してしまうかもしれません。

実は、キャッシュフローの読みは上記以外の項目も多く絡んできます。
そして、会社や商売の内容によっても、別途考慮しなければならないものは千差万別です。

よって、経営者は税理士との日々のコミュニケーションの中で、自社独特のキャッシュフローの読み方というものを学んできましょう。

経営者なら会社の数字が自然と頭にこびり付いて離れなくなるものです。
(「会社のことを考えると夜も眠れなくなる」というのはこのためでもありますね)
そうなると、資金繰りの事も上記3点を抑えていればパッと頭で計算できるようになります。

経営コンサルタントからは
「発生主義で費用収益を認識しましょう」とか
「キャッシュフロー計算書を作りましょう」とか提案されることもあるでしょう。

しかし、零細企業では、要は「キャッシュが位ら入り、位ら出て、位ら手許に残るか」をキチンと把握することが最も大事なのです。

その判断資料として試算表、ひいては試算表を作る前提となる会計処理基準をしっかり税理士と打ち合わせしておくことが大切なのです。

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